@article{oai:kanazawa-u.repo.nii.ac.jp:00030439, author = {安村, 典子}, journal = {言語文化論叢}, month = {Mar}, note = {AA11128602, 『オデユッセイア』の第八巻においてデ-モドコスの歌う三つの歌のうち,二番目に歌われるアプロデイーテーとアレースの情事の顛末(以下「第二の歌」と略)は,神々の滑稽な側面が明るい調子で歌われていること,謀略をも含めた広い意味での「智恵」に高い評価が与えられていること,「神々の笑い」が重要な役割を果たすこと,「弱者が強者を制する」というテーマが中心に据えられていること等の点で,きわめて興味深い部分である。この歌は従来,『オデユッセイア』の筋とは本質的な関わりをもたない,娯楽的要素の強い挿話として取り扱われることが多かった。しかしこの部分の「語りの手法」を検討してみると,この歌は『オデユッセイア』の主題と深く関係していることがわかる。「第二の歌」の語りの手法における最大の特徴は,この歌がいわゆる「入れ子構造」の形式をとっており,パイエーケス人の島における宴の場での余興として歌われていることである。この歌はトロイア戦争の初期と末期の事件を歌う,デーモドコスの第一と第三の歌とも深い関わりをもち,更に『オデユッセイア』全体の構造とも緊密に関わっている点で,入れ子構造としての優れた効果をあげている。すなわち,放浪の旅人の正体は何者かというテーマで第一,第三の歌と関わり,圧倒的に不利な条件のもとで妻を奪い帰すという点で,詩全体のライトモティーフとも関わっているのである。しかも「第二の歌」では物語の舞台が天上に移され,神々の話として設定されることにより,いくつかの重要な効果がうみだされている。たとえば詩の本筋ではオデュッセウスが復讐者であるが,「第二の歌」ではへーバイストスが復讐者となることにより,見事な工芸技術による策略が披露され,物語としての面白さが加えられること,またへーバイストスの成功はオデユッセウスの最終的勝利を暗示し,詩全体の中で長い時の流れを通じて語られるテーマが,一瞬のエピソードに凝縮されていることなどである。このように入れ子構造の形式をとることにより,「第二の歌」は詩全体に重層的な効果と奥ゆきとを与えているのである。, 金沢大学工学部}, pages = {173--194}, title = {『オデュセイア』におけるデーモドコスの第二の歌(8.266-366)}, volume = {2}, year = {1998}, yomi = {ヤスムラ, ノリコ} }